大人になるにつれ、すこしずつ身近になってくる「水引」。

慶弔だけでなく多彩な場面で使われるこの美しい飾りには、歴史と技術、そして渡す相手へのさまざまな想いが詰まっていることをご存知でしたか

 

そこで今回の記事では、水引の由来や制作工程など。水引にまつわるあれこれをご紹介します。

 

水引の由来

水引」ということばを初めて知ったとき、何を指しているのかすぐには分からなかったという経験がある方は実は少なくないのではないでしょうか。

 

このなめらかで張りのある細い紐は、細長く切った和紙を縒(よ)って紐状にした紙縒(こより)に、水糊を全体に引いて乾かし固めたものです。そこから「水糊を引く」ということから、水引と呼ばれるようになったという説があります。そのほかにも、紐を染色する際、水に浸して引きながら染めたことを由来とする説もあります。

 

漢字で書かれる「水引」の文字と、細やかに美しい飾りの数々のイメージ。これらがなんとなく結び付けづらく感じることがあるのは、どうやら実物の飾りの形状ではなく製作時の様子から呼び名が付いたためだったのかもしれません。

 

水引の今昔

水引の起源は、遠く飛鳥時代にさかのぼります。

遣隋使として隋に派遣された小野妹子が日本に持ち帰った贈りものに、航海の無事を祈った紅白の麻ひもがかけられていたことから、宮中への献上品や貴族間での贈答品に紅白のひもが結ばれるようになったといわれています。のちにその素材が和紙に代わり、水引が誕生したようです。

 

現在、国内の水引の産地としては、長野県飯田市がもっとも有名で、そのほかにも愛媛県伊予三島市でも盛んに生産されています。かつて、和紙の作られるところでは必ずと言ってよいほど、水引も作られていましたが、今では非常に限られた地域でしか生産されなくなっています。

 

戦後は一般家庭でも結納や結婚式などで豪華な水引飾りが多用されましたが、リボンの普及にともない、水引は徐々に限られた場面でしか使われなくなってきているのが現状です。しかし、やわらかなリボンとは異なり、水引は和紙特有の張りをもち、そこには凛とした美しさがあります。

ほどいてしまうと元には戻らない束の間の美もまた、水引ならではの味わいといえるでしょう。

 

水引ができるまで

水引の一般的な長さは「三尺水引とよばれる90cmのもの。

長いテープ状に切断した和紙に水を含ませながら、数本ずつ縒っていきます。

 

天気のよい日や広い場所で、できあがった紙糸100本余りをひと組にして長く平らな帯状に張ります。そこへ、クレー粉や米糊、布海苔(ふのり)などを原料とした専用の糊をまんべんなく塗りながらしごいていき、しっかりと乾燥させます。白い状態のこの紙糸に、刷毛を使って赤、黄、黒など様々な色に染めていき、そうしてさらに乾燥させたのち切断したものが一般的に水引といわれる「紙巻水引となります。

 

また、染め分けせず金銀の紙が巻いてあるものを「金銀水引、アルミ箔を巻き光沢を出すようにしたものを「特光水引と呼ぶこともあります。

そのほかにも、水引に人工の絹糸を巻いた落ち着いた雰囲気のものやラメの入った細いフィルムを巻いた華やかなものなど、じつにさまざまな色合いの水引があります。芯は紙でも、様々な素材をまとった水引が存在するのです。

 

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