「お正月」をいえば、新年を祝う一年で1番始めにくる行事のこと。

じつは、1月にはお正月とは別に「小正月(こしょうがつ)」と呼ばれる行事があることをご存知ですか。

元旦から1月3日までの三が日である「大正月」が新年に歳神さまをお迎えするという意味を持つのに対し、「小正月」は豊作の祈願や家内の安全の祈願をするという意味合いがあります。この時期に悪霊払いや無病息災の風習が行われるのも、このことに由来します。

あまり聞きなじみのない小正月。今回はその由来や行事、食事についてお届けします。

小正月とはいつのこと?

(1月13日~16日の3日間を指す場合もありますが)小正月は、一般的に1月15日とされています。
この時期が「小正月」とされているのは旧暦との関係があります。
旧暦では新月の日を1日(ついたち)、満月の日を15日(十五夜)、そしてつぎの新月の日までを1か月としてきました。古来より日本では満月には特別な力があると考えられ、旧暦の1月15日は立春後初めての満月にあたることから、この日を正月としました。

やがて明治時代に入ると太陽暦になると、元旦(1月1日)を「大正月」、そして1月15日を「小正月」と呼ぶようになったといわれています。

ほかの呼びかたをすることも

また小正月は、年末から新年を迎える準備や来客の対応で慌ただしく働いた女性が一息つける時期として、「女(おんな)正月」とも呼ばれます。これに対して、大正月は年男が活躍することから「男正月」と呼ばれます。

小正月におこなわれる行事・行事食

大掃除をしたり、門松やしめ縄を飾ったりして年神様を迎える大正月に対して小正月は、豊作祈願などの個人的(もしくは家庭的)な行事が多くなります。そして小正月の行事は、以下の大きく3つに分けられます。

・豊作祈願(餅花、繭玉、庭田植え など)
・吉凶占い(粥占い、豆占い など)
・悪霊祓い(左義長、鳥追い など)

そのなかから今回は、代表的なものをいくつかご紹介します。

餅花(もちばな)

お正月には家の外に門松を飾りますが、小正月では1年の五穀豊穣を祈り、餅花(もちばな)を飾ります。
餅花は、稲穂を連想させるヤナギなどの枝に小さく切った紅白のお餅や団子をさして飾ります。米粉をつかって蚕(かいこ)の形にし、繭玉(まゆだま)として飾る地方もあり、これは養蚕が盛んだったころの名残りと思われますこのことから、小正月のことを「花正月」と呼ぶ地域もあります。

左義長(どんど焼き)

左義長(さぎちょう)は、お正月飾りや書き初めを集めて燃やす行事のこと。燃やしたときの煙とともに年神様が天上に帰るとされ、その火でお餅を焼いて食べることで万病を防ぐとされています。また左義長は、「どんど焼き」「どんど」などと、地域によってさまざまな呼びかたがあります。

粥占(かゆうら・かいうら・よねうら)

粥占はおかゆを炊いて、この1年の吉凶を占う行事です。粥占は各地の神社で祭礼として行われます。多くの場合は小正月に神にあずき粥を献上するときに、天候や作物の豊凶などについて占います。占いかたにはいくつか種類がありますが、一般的には煮え上がったお粥のなかへ棒を入れてかき回し、棒についた米粒の数で占います。そのほかにも、青竹を12本入れてひと月ごとの吉凶を占うものや、お米と小豆(あずき)と竹筒を一緒に炊いて、竹筒に入った小豆の数で吉凶を占うものもあります。

たとえば、京都府亀岡市千歳町の出雲大神宮でおこなわれる粥占祭(よねうらさい)では、毎年1月15日に小豆を混ぜた米を早生、中生(なかて)、晩生(おくて)を表す3本の竹筒とともに釜で炊きます。ここでは筒に入った小豆が少なく、米が詰まっているほど豊作としています。

小豆粥(あずきがゆ)

小豆(あずき)の赤い色には、昔から邪気を払う力があると考えられ、小正月の1月15日に邪気を払い、この1年の健康を願って小豆粥を食べる風習があります。この15日は望の日(もちのひ)なので、望粥(もちがゆ)とも呼ばれます。また、(東北地方や北陸地方などでは)1月7日の七草粥のかわりとして小豆粥を食べる地域もあります。

古来より、豊作の祈願や大切な家族の健康と安全の祈ってきた小正月。
ことしは玄関先に餅花を飾ったり、家族の健康を願って小豆粥をいただいてみてはどうでしょう。

SPECIAL