幾何学模様を生み出す箱根寄木細工|その特徴と模様の種類
箱根を代表するお土産のひとつとしてもよく知られている、「箱根寄木細工」。
寄木細工は自然の木材を使い作られており、色や組み合わせかたにより、さまざまな模様を表現します。その数はなんと、100種類以上あるといわれています。
この記事では、箱根寄木細工の歴史から特徴、種類について詳しく紹介します。
箱根寄木細工とは
寄木細工(よせぎざいく)とは、さまざまな種類の木材を組み合わせ、それぞれ異なる色合いを利用して模様を描く木工技術です。箱根寄木細工は神奈川県箱根町で生産されており、日本が誇る伝統工芸品のひとつです。
日本ではほかに類を見ることがなく、昭和59年に通商産業大臣(当時)より「伝統的工芸品」に指定されています。正確かつ複雑な文様を表現していながらも、同時に木の暖かみを感じさせてくれる魅力があります。
箱根寄木細工の特徴は、箱根の樹木が色鮮やかな幾何学模様たちを生み出すことができるという点です。種類の多い木材それぞれがもつ、異なる材色や木目を活かし、寄せ合わせることで緻密な幾何学文様を作りだされます。
代表的な作品は、側面をスライドさせる仕掛けで開く「秘密箱」。
別名「からくり箱」とも呼ばれており、簡単に開けることができない作りとなっています。複雑な仕掛けもさることながら、精緻で美しい模様は人々を惹きつけてやみません。
箱根寄木細工の歴史について
箱根寄木細工の始まりは、江戸時代まで遡ります。
江戸時代後期ごろに、箱根山の畑宿という宿町で石川仁兵衛 (いしかわにへい)) が作り始めたといわれています。当初は、乱寄木や単位文様による寄木細工が主流だったようです。このころは、この土地を訪れた旅人たちの土産として親しまれていました。
明治時代初頭には、静岡方面の寄木技法がもたらされました。連続文様構成の小寄木が確立したことで、幾何学模様の寄木細工が作られるようになっていきました。そして、現在まで寄木細工の技術が受け継がれ親しまれています。
文様の種類はなんと50種類以上
寄木細工はいくつもの木材を使って、さまざまな文様を表現しています。
「六角麻の葉」や「紗綾型(さやがた)」「青海波(せいがいは) 」「七宝矢羽(しっぽうやばね)」などの伝統的な文様をはじめ、現在では約50種類以上の文様が存在します。
木材の色の系統は、白色、淡黄色系、灰色系、黄色系、茶色系、緑色系、褐色系、赤色系、黒色系といった、9つの系統に分けられています。いくつもの木材と角度を変えて作ることで、100種類以上になるといわれています。
繊細な技巧の集大成、寄木細工
そんな寄木細工は、どのような工程を経て生み出されるのでしょうか。
《製作工程》
まずは、色や木目の異なる板を配色して貼り合わせます。その板を、型を用いて正確な形に削り出し、さらに貼り合わせて文様のパーツ(単位模様)を作ります。それらの単位模様をいくつも組み合わせることで精緻な幾何学模様を作り出したものを「種板(たねいた)」と呼びます。
細かなパーツを正確に削り出しては寄せていく、気が遠くなるような作業です。
「種板」をろくろで削り出すなどして形作った作品は、「無垢もの」と呼ばれます。丸みを帯びた形も作ることができ、曲面の出し方によって模様が変わるのも特徴のひとつです。
「種板」を特殊な大鉋(おおかんな)で削り、薄いシート状にしたものを「ヅク」と呼び、この「ヅク」を木製品の外側に貼り付けて作られた作品は「ヅクもの」と呼ばれます。この「ヅク」が作れるようになったことで、寄木細工をあしらった製品の量産が可能になりました。
熟練した匠の技
寄木細工の精緻な文様は、職人たちの熟練した技によって生み出されています。
そんな寄木細工は現在、どのような場所やシーンにも馴染む風合いある和洋折衷のインテリア雑貨としても注目を集めています。
箱根寄木細工は、文様によってまったく異なる表情をみせます。ぜひ皆さんも手に取って、寄木細工の魅力について触れてみてくださいね。