厳しい暑さがつづくと、どうしても外へ出るのが億劫になりがち。
そんな暑い季節の外出や冷房がない場所で役立つのが、扇子(せんす)。扇ぐことで涼をとることはもちろん、芸やお茶の世界などさまざまな分野で使用され、それぞれ異なる形式や意味を持っています。

扇子は1年を通して使うことができるけれど、もっとも出番が増える夏。

そんな涼やかな夏の風物詩のひとつである扇子の歴史、扇子をより優雅に楽しむためのヒントをご紹介します。

 

扇子の歴史

扇子の歴史は、平安時代初期までさかのぼります。

数枚の木簡(もっかん:文書の記述や保管をする際にに用いる薄い木の板)を持ち歩くために、片端を綴じて使用した「檜扇(ひおうぎ)が始まりとされ、当時はおもに男性が公の場で使用していました。その後、檜扇に絵が描かれるようになると女性が装飾品として好んで使用するようになっていきました。

 

やがて、現在の扇子の原型となる夏用の扇である蝙蝠扇(かわほりせん:竹や木の骨組みに片面だけ紙を貼ったもの)が登場しました。この扇子は鎌倉時代になると中国へと渡り、両面貼りとなったものがやがて、室町時代に日本へと逆輸入されて普及していきました。

当初は貴族や神職者のみが使用を許されていた扇子ですが、このころには庶民の使用が認められるようになり、能や演劇、茶道に用いられるようになっていきました。

 

扇子の役割

扇子は、大きく分けて2つの役割をもっています。

 

扇子の役割①:涼をとるため

まずひとつは、扇子を扇ぐことで涼をとるため。扇子が誕生したころは全面木製で大きさも30センチほどありましたが、やがて夏用に竹と紙で作られたものが出てくると、暑さを和らげる目的で使用されるようになりました。扇風機が普及するようになるまで、扇子はうちわとともに、庶民にとって夏の必需品でした。

扇子の役割②:装飾品として

そしてもうひとつは、装飾品として使用するため。貴族の正装の必需品として用いられていた扇子は、平安時代になると茶道や能、舞などにも欠かせない重要な道具として使われるようになります。なお、現在では和装での冠婚葬祭には「祝儀扇(しゅうぎせん)」と呼ばれる専用の扇子が1年をとおして用いられています。

 

扇子の上手な使いかた

扇ぐ速さは、ゆっくり微風で

扇子をせわしなくバタバタと扇ぐのは、見た目にもあまり心地よいものとはいえません。また、強い風を間近に受けても気持ちがよいわけではなく、適度な微風のほうが心地よく感じられるもの。また、浴衣など和装の際は顔を仰ぐより、袂(たもと)から風を送るようにすることで涼しく感じられるようになります。

 

使用時にもちょっとした気づかいを

扇子を使用する際にちょっとした気づかいをすることで、お気に入りの扇子を永く使うことができます。

扇子を使用する際はまず、左手を下から添え、右手の親指で骨をずらすように押して開きます。扇子をすこし開いたら、両手で扇子をゆっくりと広げるようにします。そして閉じるときは扇子を両手で持ち、右手で奥から手繰り寄せるように、扇子を少しずつていねいに閉じます。

 

また、扇子を持ち歩く際には専用の扇子袋やハンカチ、手ぬぐいなどに包んでおくと型崩れを防ぐことができます。また使用しないときには、責(せめ)と呼ばれる和紙の帯紙などをはめておくのもよいでしょう。

扇子に香りを忍ばせて

扇子をより楽しむ方法に、「香り」があります。白檀(ビャクダン)や桧(ひのき)を使用したものは、少々値段が張りますが、扇子を扇ぐたびにほのかな香りを楽しむことができます。

より手軽に香りを楽しむのであれば、お香や匂い袋などを扇子とともに密封しておくのもおすすめ。この方法であれば、お気に入りのフレグランスや精油でも香りづけをすることができます。ただし、繊細な素材や淡い色の扇子の場合は傷めてしまうこともあるため、香りづけをしたハンカチなどに包んで香りを移すようにしましょう。

平安時代ごろは風を送るためではなく、口元を隠したり、相手とのやり取りで物を乗せて差し出したりする、社交アイテムとして使用されていた扇子。ことしの夏のお出かけは、扇子とともに小粋に楽しみませんか。

 

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