古来から日本人にとって切っても切り離せない文化のひとつである「お彼岸」。

秋のお彼岸は、秋分の日(9月23日ごろ)とその前後3日間を含んだ7日間この期間は仏壇や仏具、お墓をきれいにすることで先祖への供養を行うとともに、秋の収穫に感謝をささげます。

 

特に「お彼岸」と聞くと、仏前に供えるおはぎやぼたもちを思い浮かべる方が多いかもしれません。
秋のお彼岸では「おはぎ」をご先祖さまへお供えしますが、春のお彼岸には「ぼたもち」をお供えします。

 

「おはぎ」と「ぼたもち」。
この2つにはどのような違いがあるのでしょうか。

 

おはぎとぼたもちは、基本的に「同じもの」

 

「おはぎ」と「ぼたもち」の2つは基本的に同じものですが、それぞれ食べる時期が異なります。

 

秋は萩の花の季節が近いことから「御萩(おはぎ)」、いっぽう春のお彼岸は牡丹の花の季節に近いことから「牡丹餅(ぼたもち)」と呼ばれるようになりました。

また、それぞれお花に由来することから形にも違いが見られます。
萩は小さくてやや細長い花を咲かせるのに対して、牡丹は大きくて丸い花を咲かせます。このことから、ぼた餅は大きめで丸い形、そしておはぎは小ぶりの俵型をしています。

また、おはぎとぼたもちはあんこの収穫時期に合わせて使用される種類が異なります。材料となる小豆の収穫時期は、9~11月

そのため秋のお彼岸では、収穫したての小豆は皮までやわらく食べられる粒あんとして使用し、春のお彼岸では、固くなってしまった皮を取り除いてこしあんとして使用します。

 

なぜ、あずきを使うの?

お彼岸におはぎやぼた餅をお供えするようになった由来には諸説あります。ただそのひとつに、小豆の赤い色には魔除けの効果があるといわれ、邪気を払う食べ物として先祖へお供えをするとされています。

また、もち米とあずきの2つを「合わせる」という言葉の語呂から、先祖の心と自分たちの心を「合わせる」という意味もあると考えられています。そして、おはぎに使用される砂糖は、かつて非常に高価なものであったため、その砂糖を使用するおはぎはたいへん貴重なものでした。

 

じつは夏や冬にも呼び方がある

季節によって呼び名がことなるおはぎ(ぼた餅)ですが、じつは夏は「夜船(よふね)」、冬は「北窓(きたまど)」という呼び名がそれぞれあります。それぞれの由来は、以下のとおりです。

 

・夜船(よふね)

(餅を)いつついたのかがわからない


(夜だから船が)いつついたのかがわからない

【夜船】

 

・北窓(きたまど)

(餅を)いつついたのかがわからない


(北向きの部屋では月がみえないので)月知らず

【北窓】

 

このように、おはぎは臼と杵を使って餅つきをすることなく作れることから、つきしらず」ということば遊びに由来していることがうかがえます。

古来よりわたしたち日本人は、ご先祖様へと通ずるとされるお彼岸の時期に、感謝の気持ちやさまざまな祈りをこめておはぎやぼた餅をつくってお供えをしていたのでしょう。

ことしの秋のお彼岸は、日本語ならではの風情とともにおはぎを味わってみてはいかがでしょう。

 

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