重陽(ちょうよう)の節句の由来と過ごしかた
桃(もも)の節句や端午(たんご)の節句などと並ぶ五節句のひとつ、「重陽(ちょうよう)の節句」。菊に長寿を祈ることから「菊の節句」とも呼ばれますが、あまり聞き慣れないという方が多いかもしれません。
かつては数ある節句のなかで、もっとも重要なものだったにもかかわらず、現在ではほかの節句に比べてあまり目立たないものとなっています。そこで今回の記事では、9月9日の重陽(ちょうよう)の節句の由来や起源、楽しみかたについてご紹介します。
もくじ
重陽の節句とは、どんな日? 由来は?
重陽の節句とは、毎年9月9日に行われる年行事のひとつ。江戸時代に制定された「五節句」の一つとなっています。そんな重陽の節句は、どのような起源・由来があるのでしょうか。
重陽の節句の起源・由来は? 日本で定着しなかった理由
「重陽(ちょうよう)の節句」は、もともと中国より伝えられたことが起源となっています。
中国には陰陽(おんみょう)思想と呼ばれるものがあり、この世に存在するすべてのものは「陰」と「陽」で成り立っているという考えがありました。その陰陽(おんみょう)思想において奇数の数字は、「陽」を表すことから縁起がいい数字だとされてきました。そして節句とは、「季節の節目に行なわれる伝統行事」のことを指します。
中国では漢時代(前206~8年)より、重陽の節句を正式な行事として定め、陽数の9が重なる日は非常に縁起の良い日だとされていました。当時は盛大な行事が執り行われ、2~3日続いたといわれています。そして中国では、菊を薬用して多く栽培されていました。このこともあり、重陽の節句になると、菊の香りを移した菊酒を飲み、健康や長寿を祝っていたとされています。なお、この行事は現代にも根付いており、2013年には旧暦9月9日を「高齢者の日」(中国語では 老年节)と制定されました。
日本に重陽の節句が伝わった歴史
平安時代
重陽の節句が日本へ伝わったのは、平安時代初期。当時は宮中行事のひとつとして、「重陽の節会(ちょうようのせちえ)」として執り行われていました。また、この行事の際に菊の鑑賞も行われていたため、「菊の節句」「菊の宴」とも呼ばれていたといいます。この行事では天皇含め貴族たちが紫宸殿に集まり、詩を詠んで楽しみ、菊花酒を飲んで長寿を願いました。
そのほか、女官たちが菊の花に綿をかぶせ、菊の香りと夜露をしみこませた菊の被綿(きせわた)を作り、その綿で身体を撫で、長寿や若返りを祈ったとされています。なお、『枕草子』や『紫式部日記』にもその様子が記されています。また、一部の農民の間では収穫祭として祝われ、「栗の節句」「刈り上げ節供」と呼ばれていたとされています。
江戸時代〜明治時代
重陽の節句は、江戸時代になると武家の祝日として定着していきました。当時は、五節句の締めくくりとして、五節句の中で最も盛り上がったとされています。その後、明治時代になるまでには一般市民の間でも祝日として定着したことで、さまざまな場所でお祝いをしていたそうです。
重陽の節句が日本で定着しなかった理由
現在では神社仏閣でお祝いをする程度になっていますが、菊を主役に不老不死や繁栄を願う行事として伝えつづけられています。そんな重陽の節句が日本であまり定着しなかった理由は、さまざまなものがあるとされていますが、そのひとつに「長寿を祝う」という目的が、「敬老の日」に取って代わられているという点が挙げられます。
その一方で、重陽の節句の祭りが現在でも根付いている地域もあります。九州地方では、「9日」を「くんち」と呼んでいる地域があり、「長崎くんち」「唐津くんち」といったお祭りは、旧暦の重陽の節句にあたる9月9日に行われたことが由来になったという説もあります。
重陽の節句の主役は「菊の花」
冒頭でもお伝えした通り、重陽の節句の主役となるのが菊の花。その理由は、中国で始まったこの行事が、「長寿を願う」という目的で始まったことにあります。
中国では菊が、長生きの効果がある花と考えられてきました。古代より菊葉「翁草(おきなくさ)」「千代見草(ちよみくさ)」「齢草(よわいくさ)」と呼ばれ、積極的に食されてきたのです。そのため、長寿を願う行事に最適な花となりました。
日本に重陽の節句が伝わった際も、菊の薬としての効能がともに伝えられました。当時の日本では菊は珍しい花とされ、食用としてだけではなく、鑑賞用としても楽しまれました。
菊といえば晩秋のころに咲く花という印象があるかもしれませんが、旧暦の9月9日は新暦の10月中ごろにあたるため、まさに菊の花が美しく咲く季節。新暦になり菊の見ごろと合わなくなったことから、季節が合わないと感じるかもしれませんが、当時の9月9日は現在の10月中~末ごろです。
重陽(ちょうよう)の節句にいただきたい行事食
銀雅堂(ぎんがどう) 福楽 まめざら3種セット
重陽の節句は秋の収穫を祝う意味合いも持つことから、お祝いの席には秋の味覚が数多く登場します。ここでは、祝い膳に登場する料理の一例をご紹介します。
食用菊
重陽の節句の主役である菊の花を食用菊をおひたしやお吸いものとして食されてきました。
栗ごはん
江戸時代から秋の味覚として親しまれてきた栗をつかった栗ごはんを食べる風習があり、重陽の節句は別名「栗の節句」とも呼ばれていました。
秋茄子
旧暦では、秋が茄子(なす)のもっとも美味しい季節。重陽の節句では、煮びたしや焼きナスとして、祝いの席に登場しました。そのほかにも、祝い膳とともに邪気を祓う不老長寿の妙薬として、菊の花びらを浮かべた「菊酒」をいただくという風習もありました。
秋の訪れを祝う「重陽の節句」
これまで「重陽の節句」を知らなかったという方や秋の特に意識していなかったという方も、今年の9月9日は古来より大切にされてきた行事に、ちょっぴり意識を向けてみるのはいかがでしょうか。
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